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2024.8.1 卵子凍結(未受精卵凍結)を行っています
当院では卵子凍結(未受精卵凍結)を行っています。
卵子凍結(未受精卵凍結)とは、採卵を行い受精前の卵子の状態で凍結保存をする医療技術です。
卵子凍結には下記の2種類があります。
- 社会的未受精卵凍結
社会的な様々な理由から、現段階での妊娠は希望しないが、卵子の数と質が加齢とともに減少してしまうため、妊孕性を保つために患者様本人の意思に基づき、卵子(未受精卵)を凍結・保存すること
- 妊孕性温存のための未受精卵凍結
悪性腫瘍(がんなど)や自己免疫疾患などに罹患した女性に対し、その疾患治療を目的として外科的療法、化学療法、放射線療法などを行うことにより、その女性が妊娠・出産を経験する前に卵巣機能が低下し、その結果、妊孕性が失われると予測される場合、妊孕性を保つため患者様本人の意思に基づき、卵子(未受精卵)を凍結・保存すること
特に最近は、社会的卵子凍結に関しての問い合わせが多いため、現代の日本社会において社会的卵子凍結の需要が増えている理由に関して解説します。
まず、日本を含む先進国では、女性が子供を産む年齢が長年にわたって確実に上昇し続けています。日本では2021年には第一子出産平均年齢が以前の30.7歳と比べて30.9歳に上昇しました。
出典:R3年人口動態統計
下の図は合計特殊出生率を表します。合計特殊出生率は、出産可能年齢(15~49歳)の女性に限定し、各年齢ごとの出生率を足し合わせ、一人の女性が生涯、何人の子供を産むのかを推計したものです。
年々減少傾向ですが、特に年齢別では、女性の婚姻年齢の最頻値(最も多い)が26歳、平均値29歳(R2年人口統計参照)を考慮した場合、出産年齢は特に25-29歳以降が重要となります、2021年には赤の25-29歳、黒の34-34歳までは合計特殊出生率0.4-0.5ですが、40歳以降では約0.1未満となることが分かります。
出典:R3年人口動態統計
2021年各年齢別の第一子出生数は下記のようになります。
出生のピークは30歳としてその後は低下します。
参照:政府統計e-STAT参照 https://www.e-stat.go.jp/
婚姻年齢に近いため、ちょうど30をピークとして出生数が多いことは理解できますが、
妊孕性のピークも30-34歳を超えると下記の図のように急激に低下します。
参照:Maroulis GB. Effect of aging on fertility and pregnancy. Semin Reprod Endocrinol. 1991;9:165‐175.一部改変
下記の図は第一子~第三子の出生のピークですが、第二子32歳、第三子35歳となっています。
参照:政府統計e-STAT参照 https://www.e-stat.go.jp/
そして夫婦の最終的な出生子ども数「完結出生子ども数(完結出生児数)」は年々減少傾向にあります。
出典:国立社会保障・人口問題研究所2021年社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)
また、女性のライフコースの調査では、下記のように変化しています。
専業主婦や子育て後再就職したいという女性は減少傾向で、代わりに子育て仕事両立や、婚姻を希望しない、挙児を希望しない女性も増えています。
出典:国立社会保障・人口問題研究所2021年社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)一部改変
これらをまとめると、
・婚姻年齢、第一子出産年齢が以前よりも遅くなっているため、完結出生児数が減少しており、それに伴い人口も減少傾向
・上記の要因は様々あるかもしれないが、女性の社会進出推進や意識の変化が一つの要因となっている可能性がある
・現代の女性のキャリア形成、ライフコースを考慮し、出産するという選択をすること自体を遅らせることが必要になるかもしれない
と言えます。
そしてその選択のために、いざ妊娠したいと考えた際に妊娠率・出生率が低下しないように妊孕性を温存できる医療技術が卵子凍結です。
卵子凍結をしておけば、将来必ず妊娠できるわけではありません。母体の年齢が上がることで、周産期合併症、例えば妊娠高血圧腎症、妊娠糖尿病や早産、弛緩出血帝王切開のリスクが高くなります。母体年齢の上昇は、母体双方にとってリスクが上昇することを理解と準備をしておくことが非常に大切です。
※当院では、社会的適応による卵子凍結のみ行なっております。